PIT-GObとDJ MUNARI——「REBORN」という大勝負
PIT-GObのキャリアにおける転換点となったのが、幼馴染である盟友DJ MUNARIとのアルバム「REBORN」です。
DJ MUNARIはPIT-GObと渋谷で幼少時代を共に過ごした存在で、後に渡米してニューヨークのHarlemを拠点に「下剋上NYC」として活動していました。
2010年にリリースされた「REBORN」は、全16曲をニューヨークで録音した意欲作です。
「生まれ変わり」を意味するタイトルが示すように、この作品はPIT-GObの新たなフェーズへの突入宣言でした。
「ガキの頃描いた想いをドンピシャのタイミングで献上」という言葉通り、幼馴染とニューヨークという本場で作り上げたこのアルバムは、「REBORN」を引っさげた全国ツアーへと発展し、大きな話題を呼びました。
「下剋上NYCのDJ MUNARIが初の日本人ALLプロデュース」という点でも異例の作品で、渋谷で育った2人が大人になってニューヨークで再び出会い、音楽を作るという物語が「REBORN」というアルバムに凝縮されています。
PIT-GObの1stアルバム「53」について
「REBORN」の前に制作されたPIT-GObの1stアルバムのタイトルは「53」です。
自身の首に最初に刻んだタトゥーである「53(昭和53年=生まれ年)」をそのままアルバムタイトルにするという決断に、PIT-GObの「生き様をそのまま音楽にする」というスタンスが表れています。
「53」からおよそ半年後に「REBORN」がリリースされており、PIT-GObが「REBORN(生まれ変わり)」というタイトルに込めた意味は、前作「53(自分の原点)」を経た上での進化という意味でもありました。
PIT-GObと映画「TOKYO TRIBE」
2014年、PIT-GObは園子温監督・鈴木亮平主演の映画「TOKYO TRIBE」に出演しました。
漫画「TOKYO TRIBE 2」を原作とするこの映画には、D.O・MC漢 a.k.a. GAMI・ANARCHY・KOHHなど日本のヒップホップシーンを代表する多くのラッパーが出演しており、PIT-GObもそのキャストの一員として名を連ねています。
映画の出演によって、ヒップホップシーン内にとどまらない認知度の広がりが生まれ、PIT-GObの活動の幅がさらに広がりました。
PIT-GObとバー経営——「渋谷でのBar」という原点回帰
PIT-GObは現在、自ら渋谷でバーを経営しています。
「そこでの人々との出会いがPIT-GObの生きる原動力となり、その日常の中の経験がPIT-GObの生み出すリリックへと形を変えていく」という公式プロフィールの言葉が、PIT-GObの音楽制作の根本にあるものを示しています。
渋谷で育ち、渋谷でヒップホップに出会い、渋谷でバーを経営する——この一貫した「渋谷」という場所へのこだわりが、PIT-GObというラッパーのリリックに宿る地に足ついたリアリティの源泉です。
「彼の生み出す音楽はまさにLife Styleそのものである」という表現は、バーカウンターに立ちながらリリックを書き続けるPIT-GObの姿を見れば、誰もがうなずける言葉です。
PIT-GObの「今日がダメでも」——コロナ禍のリアルな証言
2021年5月にリリースされた「今日がダメでも」は、PIT-GObのコロナ禍の体験がそのまま楽曲になった作品です。
「今日がダメでも明日がある 俺ら生きてりゃ明日がある」というリリックが示すように、前向きなメッセージが込められながらも、その背景には自身の新型コロナウイルス感染という実体験があります。
PIT-GOb自身がコロナに感染したことで気づいた新型コロナウイルスの恐ろしさ、逼迫する医療現場についての言及、そしてバーの店主として直面している休業や時短営業を余儀なくされる飲食店の厳しい状況——これらすべてを、あまいけい(Okashi Party Production)によるメロウなトラックの上でリリックにしています。
「ミュージックビデオの制作やジャケットのアートディレクションまで、PIT-GOb自ら手がけた」という制作スタイルも、この楽曲の「全部自分ごと」としてのアプローチを体現しています。
MVにはZEEBRAもカメオ出演しており、シーン内での信頼関係の厚さも伝わってきます。
PIT-GObの音楽スタイルと世界観
Life Styleラップという一貫したスタンス
PIT-GObの音楽を一言で表すなら「Life Styleそのものが音楽になっている」ということです。
修行時代に全国を回り、練マザファッカーとしてシーンに立ち、ニューヨークでアルバムを録り、映画に出演し、バーを経営する——それぞれの経験がリリックになっていくというサイクルがPIT-GObの音楽の核心にあります。
「日常の中の経験がPIT-GObの生み出すリリックへと形を変えていく」という公式プロフィールの言葉は、一般的な「アーティスト活動」の説明ではなく、このラッパーの生き方そのものの説明です。
自分でMVもジャケットも手がけるDIYスピリット
「今日がダメでも」の制作において、MV制作からジャケットのアートディレクションまでPIT-GOb自らが手がけたというエピソードは、彼のDIYスピリットを示しています。
コロナ禍のホテル療養中に自身の姿を撮影してMVに収めるという手法は、「フィクションを作る」のではなく「リアルをそのまま見せる」というPIT-GObのアーティストとしての哲学と完全に一致しています。
